

株式会社K&Co.
(日向へべす)
Hebesu brand company in Mie
一度食べたら忘れられない香りと酸味。
「へべす」は、宮崎県のごく限られた地域で
育まれてきた、知る人ぞ知る“幻の柑橘”です。
そんなへべすのおいしさに惚れ込んだ二人が
「この素晴らしさを、多くの人に届けたい」と
まだ誰にも知られていなかった果実を信じて
生産地から遠く離れた地で、ブランドを立ち上げました。
でも、その船出は決して順風満帆ではありませんでした。
マルシェで商品を並べても、誰も足を止めてくれない。
資金は尽き、夢も揺らぎ、経営の綱は切れかけました。
それでも「いいものは、ちゃんと伝えれば届く」。
そう信じ続けて5年。「日向へべす」は、
マルシェでも毎回完売するほどの人気ブランドに成長し
「BRAND MANAGEMENT AWARD 2024」大賞を受賞。
手のひらに乗るほどの小さな柑橘が
叶えてくれた大きな希望と、未来への道しるべ。
夫婦二人がへべすとともに歩んできたストーリーです。
2025.4.22


話し手
株式会社K&Co.(日向へべす)
川橋 伸一郎・田香子 夫妻
伸一郎さんは大阪、田香子さんは宮崎出身。田香子さんは2011年「日向のへべす大使第一号」、その後宮崎県の「みやざき大使」に任命。2019年に、へべすのブランド化と普及を目的とした「株式会社K&Co.」を設立。へべすを使用した商品の開発や販売を行う。2024年、へべすのプロジェクトが「BRAND MANAGEMENT AWARD 2024」大賞を受賞。
2025年6月に円頓寺商店街に店舗をオープン予定。
2025年6月に円頓寺商店街に店舗をオープン予定。


聞き手
コピーライター
後藤 麻衣子
コピーライター/編集者。2015年に工業デザイナーの夫とデザイン事務所「株式会社COMULA」をスタート。2020年に俳句専用文具ブランド「句具」を立ち上げ、商品企画以外にも句会やアンソロジーの出版など、俳句の文化推進にも注力。 受賞歴に「第15回 北斗賞」佳作、「全国俳誌協会 第4回新人賞」特別賞ほか。名古屋芸術大学 非常勤講師、東海国立大学機構「Common Nexus」アンバサダー。
#09-3
苦境を突破した、
クラウドファンディングとデザイン

厳しい経営状況のなか、どうやってそこを脱出したんでしょう…?
タカギさんには、以前から何もかも包み隠さず話していたので、「もう、資金も底をつきそうで、タカギさんにデザインをお願いしたくても、デザイン料さえ工面できない状況になってきました」と正直に相談しました。
もういよいよ見放されるかと思いきや、タカギさんから「それなら、クラウドファンディングしてみませんか?」って。
なるほど…!
クラウドファンディングで資金を調達できれば、話題の創出にもなり、さらにそれがフックになって新しい顧客層も開発できるかもしれない、と。
クラファンは、生き残っていくための賭けでもありました。
クラファンは、生き残っていくための賭けでもありました。

滋賀の小料理屋で女将業をしていた際に、今のものとは全く違いますが鯖寿司を提供していたことがありました。
そのときから、「いつか、へべすでオリジナルの鯖寿司をつくりたい」という想いはずっと温めていて。
それで、クラウドファンディングは鯖寿司で行こう、ということになりました。
そのときから、「いつか、へべすでオリジナルの鯖寿司をつくりたい」という想いはずっと温めていて。
それで、クラウドファンディングは鯖寿司で行こう、ということになりました。
もうこの際、へべす屋だということは一旦忘れて、ここは寿司屋になりきろう!と、二人で決めました。
クラファンに向けて、うちのブランドのオリジナル鯖寿司にするために改良を重ねていくなかで、
シャリの中にへべすの皮を入れるアイデアへ行きつき、「これだ!」と。


完成した黄金へべす鯖寿司
値は張りますが、それでもお祝いなどハレの日の食卓を彩る主役になれる商品として、タカギさんにブランディングをしていただき、クラファンの戦略についても全面的にお任せしました。
クラウドファンディングでの反響は、いかがでしたか?
クラウドファンディングに出したことで、本当にいろんな意見をいただいて。
もちろん心強い応援の声もたくさんあれば、鯖寿司に対する厳しい声もありました。
でも、そのひとつひとつが、すごく大きな学びになりましたし、それがきっかけで鯖寿司もさらにアップデートしてより良いものを作ることができました。
もちろん心強い応援の声もたくさんあれば、鯖寿司に対する厳しい声もありました。
でも、そのひとつひとつが、すごく大きな学びになりましたし、それがきっかけで鯖寿司もさらにアップデートしてより良いものを作ることができました。

クラファンって、ある意味、お客様の生の声がダイレクトに届く場ですよね。
いろんな声を聞いて、悩んで、試行錯誤して。その全部を経て、今の形にたどり着いたんだと思っています。
そういう意味では僕たちのやりたいことにとても合っているビジネスモデルだなと思いました。
いろんな声を聞いて、悩んで、試行錯誤して。その全部を経て、今の形にたどり着いたんだと思っています。
そういう意味では僕たちのやりたいことにとても合っているビジネスモデルだなと思いました。
すばらしいです…!
ただ、鯖寿司は、これまでの加工品の開発や販売とは、さらに一歩踏み込んだ商品ですよね。
要冷蔵の生もので、消費期限も短いですし…。
ただ、鯖寿司は、これまでの加工品の開発や販売とは、さらに一歩踏み込んだ商品ですよね。
要冷蔵の生もので、消費期限も短いですし…。
そう、やはりそこは、在庫を長く持っておける加工品とは大きく違うので。
消費期限の問題には悩んでいたものの、それは考えても仕方ないので、「消費期限内にちゃんと売ろう!」と腹を括っていたところ、タカギさんが「サバチケ」の提案をしてくれたんです。
消費期限の問題には悩んでいたものの、それは考えても仕方ないので、「消費期限内にちゃんと売ろう!」と腹を括っていたところ、タカギさんが「サバチケ」の提案をしてくれたんです。

「サバチケ」?
はい。鯖寿司の、ギフト専用の引き換え券です。
鯖寿司を贈りたい人がサバチケを買って相手に渡すと、その相手が好きなタイミングで鯖寿司を注文できる、というもの。
引き換え時の送料も込みで贈ることができます。
鯖寿司を贈りたい人がサバチケを買って相手に渡すと、その相手が好きなタイミングで鯖寿司を注文できる、というもの。
引き換え時の送料も込みで贈ることができます。
たとえば「お世話になった方に鯖寿司を贈りたい」と思ったとして、でも急に「明日、サバ寿司一本、冷蔵便で送りますんで!」って電話すると、その電話を受けた相手側も、ちょっと戸惑うと思うんです。
でもこの「サバチケ」があれば、「これ、鯖寿司に引き換えできるチケットです。お好きなときにどうぞ」って渡すことができるんです。
贈る人も、もらう人も気兼ねなく。
もらった人は好きなタイミングで、食べたいときに注文できるんです。
贈る人も、もらう人も気兼ねなく。
もらった人は好きなタイミングで、食べたいときに注文できるんです。
なるほど。
贈る側にも、受け取る側にも優しい仕組みですね。
贈る側にも、受け取る側にも優しい仕組みですね。
消費期限は3日間あるとはいえ、やはり生ものなので。
タカギさんから提案してもらったときは、「これは革命だな」と、本気で思いました。
タカギさんから提案してもらったときは、「これは革命だな」と、本気で思いました。

完成したサバチケ
実際、「これなら気軽に贈れる」「負担が少なくて嬉しい」と言ってくれる方がとても多くて。
結果的に売上にもちゃんとつながっています。
結果的に売上にもちゃんとつながっています。
贈ることを通して、ブランドや商品のファンがまた広がっていく。
その循環がちゃんと設計されているのがこの「サバチケ」なんですね。
その循環がちゃんと設計されているのがこの「サバチケ」なんですね。

本当に、この提案には感動しました。
別に「消費期限問題をなんとかしたい」なんて一言も相談してないんですよ?
それはもう、仕方のないことだと思ってたし…。
別に「消費期限問題をなんとかしたい」なんて一言も相談してないんですよ?
それはもう、仕方のないことだと思ってたし…。
そしたら、タカギさんの方から「こんなのどうですか?」って提案してくれました。
お客様が使いやすい、贈りやすいというのはもちろんですが、経営の面で見ても、売上を先に現金化できるというのはかなり大きかったです。
お客様が使いやすい、贈りやすいというのはもちろんですが、経営の面で見ても、売上を先に現金化できるというのはかなり大きかったです。
やはり「黄金へべす鯖寿司」は、日向へべすさんにとって大きなターニングポイントで、大成功の事例でしたね。

鯖寿司を出したあと、「おいしかった!」とSNSで感想を書いてくれる方が増えてきて。
食べた方の反応が少しずつ見えるようになってきたんです。
するとそれをきっかけに、「へべすっておいしいんだね!」「ポン酢とかも買ってみようかな」と、手に取ってもらえるようになっていって…。
食べた方の反応が少しずつ見えるようになってきたんです。
するとそれをきっかけに、「へべすっておいしいんだね!」「ポン酢とかも買ってみようかな」と、手に取ってもらえるようになっていって…。
これまで私たちが何年もかけて言ってきた「へべすって、こんなにおいしいんだよ!」というのが、鯖寿司をきっかけにようやく伝わり始めた気がしたんです。
もちろんおいしいものを作ったから、というのもあるけれど、「おいしかった」と自分の言葉で語ってくれる人が増えて、そこにまた別の人が共感してくれる。
そうやって輪がじわじわ広がっていく感覚がありました。
そうやって輪がじわじわ広がっていく感覚がありました。
ブランドを立ち上げる前と今とで、お二人にとって、デザインに対しての考えに変化はありましたか?
いや、もう、めちゃくちゃ変わりましたね。
デザインひとつで、こんなに印象が変わるんや、って。
以前、へべすの果汁を「これ、ちょっとスポットで売ってみようか」って、パッケージもラベルもなしに店頭に置いてたことがあったんですよ。
デザインひとつで、こんなに印象が変わるんや、って。
以前、へべすの果汁を「これ、ちょっとスポットで売ってみようか」って、パッケージもラベルもなしに店頭に置いてたことがあったんですよ。
「こんなに美味しいんやし、試食とかしたら売れる気がする」って。
今思うと、完全に手を抜いてました。
今思うと、完全に手を抜いてました。

「今しかない果汁ですー!」って、逆に限定感出したら売れるんじゃない?とか、
「レギュラー商品じゃないしいいよね」って、都合のいい言い訳ばかりして。
「レギュラー商品じゃないしいいよね」って、都合のいい言い訳ばかりして。
でも、そうやって言い訳しながらやってたら、全然売れないんですよ(笑)。
周りの商品が、世界観の統一されたものだから尚更、お客さんの反応が全然違う。
周りの商品が、世界観の統一されたものだから尚更、お客さんの反応が全然違う。
それで「やっぱこれ、あかんよな」ってなって、
タカギさんにお願いして、ラベルをちゃんとつけてもらったら、急に売れるようになって!(笑)。
タカギさんにお願いして、ラベルをちゃんとつけてもらったら、急に売れるようになって!(笑)。

ラベルがひとつあるだけで、商品としての“顔”が全然違うんだよね。
ほんまに。
「なんで今までこれをちゃんとやってなかったんやろ」って(笑)。
「なんで今までこれをちゃんとやってなかったんやろ」って(笑)。
鯖寿司も、パックの上から熨斗みたいに掛け紙をするのが基本なんですが、これがあるかないかで、お客さんの受け取り方が本当に変わるんです。

マルシェとかでも、「これ、試作品なんかな?」「余りもんかな?」って、見た目で思われることってあるんですよ。
中身は同じでも、見た目の印象で「ちゃんとしてる感」って伝わるし、それが購入の動機にもなる。
中身は同じでも、見た目の印象で「ちゃんとしてる感」って伝わるし、それが購入の動機にもなる。
見た目を整えることは、単なる飾りじゃなくて、商品の本質や姿勢を伝える大事な要素なんだなあ、と。
「多少手を抜いてもいいものだから売れる」ではなく、「いいものだからこそ、見た目を大事にする」という感覚に気づきました。
今はもう、パッケージなしの商品なんて考えられへん(笑)。
今はもう、パッケージなしの商品なんて考えられへん(笑)。
ね。
今はもうお客さんに「そんな掛けんでもいいよ」って言われても「いえ、ごめんなさい!私が掛けたいんで、どうか掛けさせてください」って待っていてもらいたいくらい。
今はもうお客さんに「そんな掛けんでもいいよ」って言われても「いえ、ごめんなさい!私が掛けたいんで、どうか掛けさせてください」って待っていてもらいたいくらい。
株式会社K&Co.日向へべす編 -目次-
毎週月曜日に1話ずつ更新!
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