名古屋・東京の空間ブランディング・店舗デザイン事務所 コムデザインラボ

愛知県大府市の農家 橘萄園 インタビュー

橘萄園
No.08

橘萄園

Orchard in Obu

夏から秋にかけて、たわわに実るぶどう。
愛知県大府市はぶどうの栽培が盛んで、
市内にぶどう園が点在しています。

ひと房、ひと房、丹精込めて育て上げた
個性豊かで色鮮やかなぶどうたちは、
甘くてジューシーで、味わい豊か。
一度食べたら忘れられない、感動の果実です。

ここでしか食べられない品種を筆頭に
長期間、旬を楽しめる豊富な品種と、
濃厚ぶどうジュースが味わえる
ジューススタンド併設のおしゃれな直売所。

50年以上続く老舗果樹園「橘萄園」を
若手園主が守り、強く育て上げています。

2022.9.22

話し手
owner
話し手
橘萄園
伴 成貴さん
香川大学農学部で果樹栽培を専攻。2012年から3年間、長野県上田市「飯塚果樹園」で飯塚氏に師事し、植物形態・生理学や土壌肥料・微生物学など理論から、ロケット剪定や育種選抜・高接ぎなど最新の技術を習得。現在は希少種の栽培だけでなく育種なども行う。
聞き手
interviewer
聞き手
コピーライター
後藤 麻衣子
名古屋・岐阜で活動するコピーライター・編集者。情報誌の編集・印刷媒体の企画を経験したのち独立。2015年には工業デザイナーの夫と、プロダクトデザイン事務所「株式会社COMULA」をスタート。自社オリジナルブランド「句具」を運営している。
#08-1

ぶどうの価値を表現する、
ロゴデザインとは

橘萄園さんのぶどうのシーズンは、いつ頃なんですか?
ぶどうの直売は、8月上旬から。お盆くらいまではすごく忙しいです。
直売所が開いているのは、9月末くらいまでですね。

ぶどうの栽培は、4月下旬から7月上旬くらいまでがピークです。
この辺りは、ぶどうの栽培が盛んな地域ですよね。
はい。
愛知県大府市は、古くからぶどうの栽培が盛んな地域で、この辺りには家族経営の
ぶどう園がいくつかあります。

うちは4,500坪ほどの果樹園があります。
数人のパートさんにも手伝ってもらいつつ、基本的には家族で切り盛りしています。
橘萄園さんも、大府で昔から続くぶどう園なんですね。
創業から50年ほど経ちました。

初代が僕の祖父で、二代目の父は、僕が13歳のときに若くして亡くなったので、
その頃から「祖父亡きあとは僕がここを継ぐんだ」となんとなく考えていました。
農学部を出て3年間はサラリーマンをやってましたが、その後家業を継ぐことを決めて、
長野県上田市の「飯塚果樹園」で修業してから、28歳のときにここへ戻ってきました。
長野では、どんなことを学んだんですか?
長野県上田市の「飯塚果樹園」で、
“ぶどうの神様”とも呼ばれている飯塚芳幸さんの元で植物形態や生理学、
微生物学などの理論に基づく土づくりや、
ロケット剪定、育種選抜などの技術を学んできました。
そのお師匠さんの受け売りですが、
うちの園もそうした理論や理屈に基づいて導き出した、土づくりにこだわっています。

いいぶどうをつくるために、もちろん経験や勘も大事なんですがそれだけではなく、
理屈や裏付けに基づいた土づくりがとても大切だと思っています。
なるほど。その土づくりによって、おいしいぶどうが育つんですね。
具体的には、主に骨粉(農林水産省が安全と認めるもの)や、
魚肥や米糠などの有機肥料を使っています。

有機肥料を使うことで、果実の糖度を高め、品質を上げてくれるのはもちろん、
薬剤の散布を最小限にとどめています。
今回、橘萄園のブランディングをスタートしたのが2018年頃とお聞きしました。

そもそも、どんな経緯でブランディングをしようと思ったんですか?
最初は「園のブランディングをしよう!」なんていう大きな話ではなく、2018年のシーズン後に「橘萄園のロゴをつくりたいね」夫婦で話したことがきっかけでした。
2018年当時は、初代園主の祖父と、3代目の僕が中心となって経営をしていました。

昔ながらのぶどう園なので、ロゴはおろか、オリジナルの箱やパッケージもない状態でしたが、「ロゴくらいほしいなあ」とは思っていて。

「うちらしいロゴがいいね!」なんて言って、
嫁さんと一緒に夜な夜なアイデアを出して考えてたんです。
夫婦二人で「ロゴをつくろう!」というところから始まったんですね。
でも、当然ながらそういうのは素人なので、全然うまくいかなくて

自分たちで考えるのは早々に諦めて「これは無理だ、餅は餅屋!」と、
大府市内にデザイナーさんがいないか検索して、早速依頼してみました。

その地元のデザイナーさんは、ロゴ案を20案くらいたっぷり提案してくれたんですが…。
そんなに!
はい。
でも、なんかこう、理由はわからないんですが、ピンとくるものがなくて。
悪いとかじゃないんです。

でも嫁さんと「どれにしよう?」と決めようとしても、
どうも決め手に欠けるというか…。
「どれにする?」「こっちの方が好きかも」「とりあえずこれはないかな…」と、
好きor嫌いという基準で消去法をしていくしかなくて、
そのうちに「こんな決め方でいいのか…?」と不安になってきたんです
ロゴって、決める基準を持つのもなかなか難しいですよね。
そうなんです。
パートさんたちに聞いてみても「これが好き」ってのがみんなバラバラで…。

何より、園の顔になる大事なロゴを、好き嫌いの多数決や消去法で簡単に決めるのも嫌だし…。
そうこうしてるうちに頭の中が散らかってきて、
そのまま半年くらい経ってしまったんです(苦笑)。
半年!ずいぶん悩みましたね。
オフシーズンのうちに完成させるつもりだったのに、思った以上に時間が経っちゃったのと、
次のシーズンに向けてバタバタし始めてしまって。

「このままでは間に合わない…!」と焦っていたときに、嫁さんが見つけてきてくれたのが
コムデザインラボ」さんでした。
依頼するデザイン事務所さんを、変えることにしたんですね。
はい。
それで早速、ロゴをつくってもらうつもりで連絡してみました。
これまで、デザイナーさんとお仕事した経験もなかったし、
問い合わせる前は「とにかくロゴを完成させたい」という一心だったので、
コムさんが空間デザインとか、パッケージとか、いろいろできることも知らずに…でしたが。
農家さんが、デザイナーさんと一緒にお仕事する機会って、あまりないんですかね。
今でこそブランディングに積極的な農家は増えてきましたが、
以前はあまりなかったように思います。

僕らも、それまで「デザイン費」なんていう経費を計上したことは一度もなかったですし(笑)。
でも、ロゴをつくりたいということだけは決まっていたので、そこまではやろう、と。

当時はロゴを完成させるために「デザイナーさんの手を借りたい」ことは明確でしたが、
どう頼めばいいのか」「どんなふうに一緒に仕事していけばいいか」については未知でしたね。
実際に、コムさんからのデザイン提案はどうでしたか?
タカギさんは、A案からF案まで6つのロゴを提案してくれました。
第一印象は「どれも良い…!」という感じでしたね


プロじゃないので詳しいことはわからないんですが、なんというか、ロゴ自体の完成度が高くて。

嫁さんと話していても
「こっちの案もいいね」「でもあっちも、そっちも捨て難いね」という印象でした。
あとは、ロゴデザイン案だけじゃなく、
そのロゴが「どんな風に使われるか」も見せてくれました。

紙袋や箱、加工品パッケージに落とし込んだイラストや、園の外観に掲示するサインもつけてくれてたんです。
あ、これですね。(当時の提案書を取り出す)
そうそう!懐かしいなあ。
これを見ると、ロゴのデザインだけでは膨らまなかったイメージがもくもく湧いて、
「ああ、こんな感じになるんだ」と納得感がありました。
同時に、ロゴをつくるだけじゃなくて、リーフレットや箱や袋、
Webサイトなんかもいろいろ触っていきたい、と話が膨らんでいきましたし、
ロゴをどんなふうに使えばいいのか、はじめてイメージできました
現在のロゴ案に近いD案の方向性に決めた、その決め手は?
最終的に決めたのは、嫁さんの意見が大きかったですね。
嫁さんが「絶対これがいい!」ってD案を強く推してくれて。

ほかのロゴも、とても可愛くて親しみもあるし、“ぶどう園らしさ”もよく出てるんですが、
なんか少し、既視感があるというか
既視感?
この辺りはぶどう園が多いのもあって、
「こういうぶどう園、他にありそうだよね」という印象、という意味の既視感です。

でも、D案のような、黒×金のシックで上品な感じって、農家であまりみたことないなぁ、と。
確かに。ぶどう色でカラフルでPOPなイメージとは、ひと味違う感じですね。
同業にもあまりいなさそう、という差別化の視点もあって、決めました。
価値の高いぶどうにも合うようなロゴがいいな」と思っていたので、ぴったりでしたね。
「価値の高いぶどうにも合う」というのは、高級感がほしい、という感じですか?
単なる「高級感」とは少し違って、「ぶどうの価値を伝えたい」というニュアンスが近いです。
と言うと?
長野での修業時代にぶどう栽培のさまざまなことを学んで、
ぶどうの価値の高さを、改めて感じました。
決して「うちのぶどうは高級です!」と高級感を推したい訳ではなく、
自分が長野で学んだことや、自信を持って育てたぶどうの「価値に合う」ような、
そんなロゴやデザインがいいな、という思いは大きかったですね。
なるほど。伴さんのその想いと合っていたロゴだったんですね。
はい。
今こうして当時の提案書を見ても、「やっぱりコレで正解だったな!」と思います。
見慣れてるだけかもしれませんけどね(笑)。
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