店に入ってすぐのトンネルっぽいゲートと、タイルの感じが駅っぽいでしょ。
フランスの地下鉄でも使われているタイルらしくて。
高木さんが探してきてくれました。
これが、僕がフランスにいた時の、メトロの駅の空気感そのままなんです。
とても気に入っています。
あ、そうなの?
全然知らなかった、そうだったんだ。
なんだ、高木さん。
全然そういうの、おもてに出さないんだもん。
店作ってる時に、そういうのもっと言ってくれたらいいのに(笑)。
最初に働いていた「湘南ガトーアベニュー葦」でお世話になったお師匠さんが、
オープンの時に、神奈川からわざわざ来てくださったんです。
その時期に、同じ店で働いてた仲間が4~5人くらい、
ちょうど同じタイミングで店をオープンしてて。
お師匠さんは、ほかの人の店もいくつか見に行ったらしくて、
僕のところへきて、こんなことを言い放ちました。
「ケーキはまだまだだけど、店はお前のとこが一番いい」と。
ケーキの味に関しては、厳しい意見をたくさんいただきましたけど、
「店は一番いい」って言ってくださって。
味のことは置いといて、その言葉がとても嬉しかったですね。
そうなんです。
「一番、ケーキ屋っぽくなくて、そこがいい」と、言ってくださいました。
そういう見方もありますが、
業界の中では、「ケーキ屋のあるべき配置」ってあるんですよね。
入ってすぐ焼き菓子があって、少し進むとショーケースがあって…っていう、
一般的な動線というか、「売れる設計」があるみたいで。
だから、ケーキ屋ってどこも同じような感じなんですよ。
そう。でもうちにはほとんどない。
逆にそうなりたくなくて、「ケーキ屋をデザインしたことがない人」にお願いしたかったので、
僕としては成功だったと思っています。
うちは、扉をあけたら、すぐに切符を買って、すぐ電車乗れればいいんです。
駅ですから。
なるほど!
おいしい切符買って、しあわせに一直線! ですね。
駅のお話はたくさん聞いたので、次は切符のお話に。
小島さんがケーキづくりで一番こだわっているところはどこですか?
基本的には、今まで教わったことをベースに、
そこに自分らしさをエッセンスとして少し加えたケーキを作りたいと思っています。
だから、どれを取っても、
いままで学んだこととか、フランスで印象に残った味とか、
ひとつひとつのケーキにギュッと思いが詰まっています。
思い入れという面では、プライスカードにも
味だけじゃなくて、ケーキ対する思いが綴られていて、印象的でした。
それぞれのケーキに、それぞれの思いがありますからね。
自分が作りたいものを、楽しく作ることは大切だと思っていますが、
でもやっぱりお客さんありきだから、
お客さんの好みや要望に寄り添ったものを、
日々追究していきたいと思っています。
へぇ。
小島さん、本当にケーキが好きなんですね。
…と思うでしょ?
ケーキ自体はそんなに好きじゃないんですよ。
ケーキ作るのは好きじゃないんですけど、それより「楽しい」んですよ。
なんでしょうね、この感覚。
上手く説明できないんですが…。
でも、「嫌い」ってのも言い過ぎかな。
好き嫌いで話をしたら、作るよりも食べる方が好き(笑)。
でも、作るのはただ「楽しい」んです。
材料を計量している時にぴったり量れたときも、
生地が焼き上がったときも、できあがったケーキを見るのも、
ショーケースに並んだケーキを眺めるのも、
人が食べてるのを見るのも、どれも「楽しい」んです。
実は細かい作業もあんまり得意じゃないですし…。
本当に苦手なんですよ。
でも楽しいからやってる。それだけです。