ずっと気になっていたポケモン×工芸展が愛知に来たのでようやく行ってきました!
素晴らしい職人技を現代的なアプローチで使われた作品を拝見できる興味深い展示だったので、「これは行かなければ!」との気持ちでワクワクしながら赴きました。
私も陶芸をやってた身としましては、こうやって色々な人がとっつきやすい「ポケモン」というものを使って工芸品が展開されるのがとても嬉しい気持ちです。
伝統工芸品をただ作っても若い人にはあまり馴染みがなかったり興味をもたない分野だと、いくら技術がすごくても伝わらないですよね。
例えば、とても技術のある彫刻師が仏像を作ってもどのくらい凄いか伝わらないですが、仏ではなくポケモンを精巧に作るだけでその凄さが伝わります。 相手のわかりやすい場に落とし込むということはどんなことでも重要なことですね。
というわけで、素晴らしい作品をいくつか紹介させてください。

このツボ、遠くから見たらなんか細々とした模様がついてるなくらいの印象ですが、近づくと...

ぎっしりとポケモンが絵付けされています!
しかもこれよく見ると金で上絵付けもされています。
(おそらく)青いところは下絵付けといい、金のところは上絵付けというものです。
一度素焼きという状態の陶器に下絵付けをして、釉薬をかけ焼き上げたあと、上絵付けを施し、再度焼きます。
ということは下と上で少なくとも2回は書いていると考えると、この量...恐ろしい仕事量ですね。
複数人が関わっているとしてもこの量は途方もないです。
他にもこのような精緻な絵付けの作品がたくさん見られました。
やはり技術を習得するような人たちは忍耐力も兼ね備えた方が多いからか、このような精密な作品になりやすいのでしょうか。

こちらは木彫刻です。
ポケモン自体も生命感溢れる仕上がりですが、葉っぱのリアリティがさらに全体の命をより現実的に表現しているように見えます。
じっくり見ると実は見えづらい葉の裏側もとても精巧に彫られていて細部への詰めが凄いです。

そしてこちらは螺鈿細工です。
螺鈿細工は貝殻を加工して漆器に施す工芸品ですが、工芸の学校にいた頃に専攻の方に聞いた話だと「貝を欲しい形に切るのが大変」と伺った記憶があります。
同じように全部切っているのかと思ったのですが、作業工程のビデオを拝見していると、機械で全て切り出しているようでした。
この量の細かいパーツを手作業でやっていないと知って逆に安心しました。
工芸も上手く機械と付き合っていく時代ですね!

蒔絵の作品です。
これの何が凄いかというと、蒔絵の素材感と相まってとても儚い雰囲気が炎の表現にとても美しく噛み合っていることと、そもそも絵がとても綺麗!
学校では蒔絵を学ぶコースもあったので彼らの作品群を見たことがあるのですが、キャンパスに描くのと違って、どうも美しく描くこと自体の難易度が高いように見受けられました。
蒔絵で綺麗に絵を描くだけで、とても研鑽の後が垣間見えます。
この儚げなファイヤーの佇まいが伝説のポケモンに相応しい作品になっているなと感じました。
工芸展では基本的に精巧な作品が多く見られました。
前述したようにこういった仕事をこなす方は忍耐力があり、細かなものを作るのが上手い上にそもそも好きなんでしょう。
とはいえ工芸にはその素材を荒々しく扱った作品もあります。

こちらは(おそらく)焼き締めで作られた陶器の作品です。焼き締めは、釉薬をかけず高温で焼き上げるもので、土の荒々しさなどを表現できる、簡単にいうと素材の味を楽しむものです。
この焼き締めというものは土と炎だけで作られるシンプルなものだけに、炎タイプのポケモンをモチーフにされているのがとても表現方法に合っていて実物を見ると感動します。
作品を作る上でどのような手法を使うかも表現の基本ですよね。
実は私はポケモンにあまり興味がないのですが、それでも人の叡智と技術が詰め込まれたこれらの作品を見て感嘆しました。
ものづくりに関心がある方は行って損のない展示です、ぜひ足を運んでみてください!